俺育て!虎ヘッド風味:ver2.3

最終回案6回目


 馬場、いや、今や馬場と呼べる面影はないほど異形に変化したモノは、大きく息を吸い、
 
 吼えた。

 大きく腕を振り、近くにあった電柱の一部を、毟り取った。
 鋭い爪で、コンクリートの電柱の一部をきれいに毟り取った。
 その破片を握りつぶす。
 己の力を確かめるようにゆっくりと握りつぶす。
 ぱらぱらと粉状の破片が手の中からこぼれる。

 馬場は、もう一度大きく吼えると、カタパルトに向かって跳んだ。
 重力制御装置の力ではなく、脚力で跳んだ。
 カタパルトの上。
 第一共振者ミキが立っていた。
 馬場は、ミキに向かって突進した。
 「馬場さん!」
 ミキが叫んだ。
 その瞬間、馬場の動きが止まった。
 そして。
 「コ ロ シ テ ク レ・・・」
 馬場が体を震わせながら言った。
 
 馬場鉄工所内では、その様子がモニターに映し出されていた。
 何も言わないが、所員の表情からは一様に戸惑いの色がうかがえる。
 『あのモノは、どこまで馬場なのか?』
 今、「殺してくれ」と言ったのは、間違いなく馬場の意思であろう。
 しかし、その馬場の意思が、あのモノのどのくらいを占めるのか。
 それを計りかねていた。

 カタパルト上。
 ミキもまた、目の前に立つ異形のモノがどこまで馬場なのかを見極めようとしていた。
 馬場が動いた。
 ぶん、と大きく腕を振る。
 爪が、ミキの顔を毟り取ろうとする。
 ス・・と後ろに退き、ミキはそれをかわす。
 矢継ぎ早に爪がミキを襲う。
 ミキは、それを全てかわす。
 ミキは、大きく後ろに跳んで、距離を取った。
 「馬場さん」
 ミキは、体の力を抜き、微笑んで言った。
 「馬場さんでしょ?」
 馬場は、動かなかった。
 「さっきから、私がよけやすいように大きく腕を振ってる」
 馬場は、黙って動かない。
 「それに、なぜ私の前に来たの?計画を阻止したいのなら、カタパルトを壊せばいい。鉄工所を襲えばいいじゃない」
 馬場の口が開いた。
 「イ、イマ・・・ダケだ」
 馬場が言った。
 「もうスグ・・・オレのい・・イシキもクワレル・・ダからソノまえに・・・」
 馬場の体が小刻みに震えた。
 「ソノまえに・・・コロシテ・・・」
 馬場の目がぎらりと光った。
 「コロシテヤル!」
 馬場はミキに向かって踏み込み、腕を振った。
 ミキは、大きく跳んでそれをかわした。
 馬場の腕は今、間違いなくミキの心臓をえぐろうとしていた。
 ミキがよけたため、馬場の目の前にはレッドスピーダーがあった。
 馬場は、レッドスピーダーに向かって跳んだ。
 両手の爪を、レッドスピーダーに振り下ろす。
 その手が、ボン、と煙を上げて消える。
 オーブガンを構えて引き金に指をかけているミキ。
 「私たちの希望は、壊させない」
 ミキは、オーブガンを連射しながら馬場とレッドスピーダーの間に立つ。
 馬場の体には、ボコ、ボコと穴が開くが、瞬時に再生する。
 しかし、オーブガンが当たると、少しづつ後ずさってゆく。
 「私たちの希望。それを壊すものは許さない」
 ミキは、オーブガンを2連発した。
 馬場の両足に穴が開き、がくり、と膝をつく。
 「でも、馬場さんは、助けたい」
 馬場の足が再生して、立ち上がる。
 ミキはまた、馬場の足を狙って、撃つ。
 「助けたいの!」
 立ち上がる馬場。
 撃つミキ。
 「助けたいの!」
 「助けたいの!助けたいの!助けたいの!」
 引き金を引き続ける。
 しかし、ついに。
 オーブガンの銃口からは、何も発射されなくなった。
 馬場の体が、完全に再生した。
 そして、ゆっくりと、しかし、力を溜めながらミキに近づく。
 馬場は、ミキを腕で捕らえられる間合いまで近づいた。
 馬場は、大きく両腕を振り上げ、吼えた。
 両腕が振り下ろされれば、ミキの体は切り刻まれる。

 そのとき。

 しゅるるっ
 と、地面を這うロープ。
 そのロープが、馬場に絡みつく。
 「これは!」
 ミキが周りを見回す。
 カタパルトの下には、第5共振者、紫の宝珠のチオリが、コントローラーを操作していた。
 チオリの操作で自在に動く、ナノマシンのロープ。
 チオリが小さくVサインを出す。
 ミキの背後から、ミキの両脇をすりぬけて、二つの風が動いた。
 一つは、花びらを舞わせるような軽やかな風。
 第4共振者、カオリ。
 そして、もう一つは、景色をも切り裂くような疾風。
 第2共振者、ユウカ。
 カオリが、馬場の足元に、小さな装置を置き、馬場の向こうへと駆け抜けざま、
 「スイッチオン」
 軽くウインクする。
 ボン、
 と、装置が破裂し、馬場の足元がネバネバしたもので固められる。
 ユウカがレイピアを抜く。
 「馬場さん、ごめん」
 と言いながら、馬場の目玉を斬り裂く。
 顔を両手でおさえて吼える馬場。
 そして、もう一人。
 ミキの後ろから右肩に大砲ほどもある兵器のようなものを担いで飛んでくる影。
 第3共振者、マル。
 マルは、ミキの前にその兵器を置いた。
 「さ、片付けるべ」
 マルはミキの肩をたたいた。
 「みんな、どうして?どうして共振しているの?オーブの力は解放されたんじゃ・・・」
 ミキが言った。
 「おめぇ、わかんないのか?」
 マルが言った。
 いつのまにか、チオリ、ユウカ、カオリもミキのそばに立っている。
 「自分のオーブをよーく見てごらん」
 カオリが言った。
 ミキは、胸のオーブを見た。
 その色は、五色に光っていた。
 「これ・・・」
 「多分・・・、それがミキの宝珠の開放された姿なんだろう。」
 ユウカが言った。
 「全ての宝珠共振者を共振させる力、それが、ミキちゃんの力だったのね」
 チオリが言った。
 共振者が絶体絶命のとき、宝珠の力は、宝珠の意思で解放される場合もある。
 チオリの宝珠が開放されたときの様子がそうであった。
 「とにかく、いいから、いつものやるべ」
 マルが、ガチャガチャと兵器を組み立てながら言った。
 「うん。」
 オーブスマッシャー。
 宝珠共振者の波動を対象に直接叩き込むものである。
 使用直後から数時間は共振者は共振状態から解除される。
 文字どうり、最後の武器である。
 5人がオーブスマッシャーを取り囲む。
 「愛をもって」ユウカがオーブスマッシャーに手を添える
 「悪しきモノのみ」マルが手を添える。
 「浄化する」カオリが手を添える。
 「生きとしいけるもののため」チオリが手を添える。
 ミキが、最後に、トリガーを握る。
 「オーブスマッシャー、拡散モード」
 5人は瞬間見つめあい、うなづく。
 「白の波動、撃ちます!」
 ミキが引き金を引く。
 オーブスマッシャーから、輝く光がシャワーのように発射される。
 光線の一筋が、馬場の体を貫く。
 その部分だけ、馬場の体が、人間の体に戻る。
 次々と貫く光線。
 ついには、光が馬場を包み込む。
 黒い煙のようなものが馬場の体から噴出す。
 まるで、逃げるかのように噴出す。
 しかし、その煙の粒子、一粒一粒が、断末魔の叫びをあげて拡散する。
 
 馬場を包んでいた光が消える。

 馬場は、元の姿で倒れている。

 馬場に駆け寄る5人。
 馬場は、うっすらと目を開けて、その様子を見た。
 そのとたん、
 馬場は、瞬時に起き上がり、後ろを向き、叫んだ。
 「来んな!」
 5人がピタっと立ち止まる。
 「いや・・・みんな、ありがとう。ミキちゃんもありがとうね。ちゃんと、お礼とか、お詫びとか言いたいんだけどさ・・・」
 馬場は、顔だけ振り向いて言った。
 「つーか、今、全裸ですから・・・」
 歓声が上がる。
 「それよか、今は作戦の決行中です。作戦の決行を最優先にしましょう。レッドスピーダーは、共振状態じゃなくとも大丈夫なようにしてあります・・・って」
 馬場は、振り向いた状態でミキを見た。
 他の4人の共振状態は解けている。
 しかし、ミキの共振状態は維持されていた。
 その状態に、全員が気付いた。
 そのとき、ミキのオーブは、赤い光ではなく、白の光が渦巻いていた。
 そのオーブから”声”がした。
 「ここからは、私が一緒です」
 ”最初の一人”の声である。
 「さあ、行きましょう。元凶の空間に」
 ”最初の一人”の声が響いた。
 

 レッドスピーダーに乗り込み、射出を待つミキ。
 鉄工所内では、モニターを見ながら、全員が射出準備に取り掛かっている。
 なんだか知らないけど、未だ全裸にタオルを巻いて走り回っている馬場の状況をツッコむ者はいない。
 尾藤が、カタパルトの調整を完了させた。
 「じゃあ、いいですか?」
 尾藤がコマンドを打ち込む。
 カタパルトが、低くうなりはじめ、ドーム状に屋根が張られた。
 レッドスピーダーを打ち出すための砲身のような形になった。
 「じゃあ、ミキさんのタイミングでどうぞ」
 尾藤がマイクに向かって言った。

 レッドスピーダーでは、ミキがエンジンをかけていた。
 ”最初の一人”が言った。
 「いよいよですね。あなたの役目ももうすぐ終わります。」
 ミキは、無言でうなづいた。
 「あなたには、つらい役目かもしれなかったけど」
 「いいえ」
 ミキが笑った。
 「私は、この世界に来れてうれしかったです。」
 「そうですか。では、行きましょうか」
 「はい」
 ミキが、アクセルをふかす。
 レッドスピーダーが、バリアに包まれる。
 「行きます!」
 ミキがハンドルに後付された格好のスイッチを入れた。
 その瞬間、レッドスピーダーが一気に加速される。
 
 カタパルトから、レッドスピーダーが射出された。
 
 しかし、肉眼では、何かが発射されたことは確認できたが、その姿は瞬間的に消えたようにしか見えなかった。

コメント
この記事へのコメント
オーブスマッシャー!
昔の戦隊物って5人で打つ大砲みたいなのが結構ありましたよね。
他のメンバーの再登場やこういう最終兵器。
最終回ちかいとこでのこういう奇跡的な仕掛けってのはいいですよね。
楽しめました!
2005/11/24(木) 23:33 | URL | マンガー #-[ 編集]
定石では、オーブスマッシャーは、後半のクールで出てくる武器でしょうね。
苦肉の策なんですけどね。
2005/11/24(木) 23:48 | URL | すしバー #-[ 編集]
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